三条市
「待てば呼ばれる」から来庁時間指定による「待ち時間ゼロ」へ
導入自治体:新潟県三条市 市民窓口課
新潟県三条市は、2024年4月から来庁予約システムを導入し、窓口業務の抜本的な改革を実現しました。人口約8万9000人の同市では、窓口手続の約9割を集約した総合窓口を運営していますが、人員配置の非効率や待ち時間の長期化が深刻な課題となっていました。予約システム導入から約2年が経過した現在、Web予約利用者の待ち時間は0秒を達成。事前予約件数は前年度比24.4%増加し、マイナンバーカード受け取りでは予約率83%に到達しています。限られた職員数で市民サービスの質を高める、自治体DXの好事例として注目を集めています。
勤務時間と受付時間のズレが生んだ慢性的な非効率
三条市が予約システム導入に踏み切った主な背景は、勤務時間と受付時間の乖離による業務効率の低下でした。正職員の勤務時間と庁舎の受付時間はいずれも8時30分から17時30分までだったのですが、業務前の準備、受付時間内に来庁された方の対応や業務後の後処理のため、職員はシフト制で分散配置されていました。その結果、「情報共有の難しさ、慢性的な人員不足感、待ち時間の増加、職員負担の増大といった非効率が顕在化しておりました」と市民窓口課の村上氏は振り返ります。
第二の課題は、業務プロセスの断片化でした。来客数と職員数を単純比較すると、1人当たりの対応件数は決して多くありません。しかし村上氏によれば、「業務プロセスが分断・断片化していたため、全体としては効率的に業務が回らないという構造」になっていたといいます。
受付時間短縮と予約制を一体的に導入
三条市は、待ち時間の解消と来庁者数の平準化を目的に予約システムを導入しました。注目すべきは、受付時間の見直しと予約制を当初から一体的に検討し、同時に実施した点です。
導入の決め手となったのは、ダッシュボードとリソースカレンダーの存在でした。「いつ・誰が来るかを事前に把握して窓口をコントロールできる。それによって、限られた人員を効果的に配置できる体制が作れると判断しました」と村上氏は語ります。
複数のシステムを比較検討した結果、FrontDeskを選んだ理由は主に二つあります。一つは、市役所への電話予約とWeb予約を一元管理できる仕組みがFrontDeskのみで実現可能だった点。もう一つは、来庁データがすべて記録され、各窓口の稼働率・待ち時間・対応時間などをダッシュボードからリアルタイムで確認できる点です。これにより、窓口分析に基づく改善・指導に加え、スケジュールに合わせた予約枠の柔軟な設定が可能となりました。
予約方法は、Web予約と市役所へのAI電話予約を用意しました。デジタルに不慣れな高齢者層への配慮として設けたAI電話予約は、幅広い市民の受け皿として機能しています。
市民への周知も徹底しました。各課の発送物への「予約優先」の記載、お悔やみハンドブック表紙への明記、市ホームページトップへの固定バナー設置、広報誌への予約専用番号とQRコードの掲載など、あらゆる接点で予約を促す環境を整備しています。
予約率83%を達成、待ち時間は実質マイナスに
導入後の成果は数字に明確に表れています。2025年度の事前予約件数は1万6397件で、前年度の1万3184件から24.4%増加しました。中でもWeb予約の伸びは顕著で、前年度の8642件から1万2220件へと41.4%増加し、オンライン予約が来庁スタイルの主流となりつつあります。
特に効果が顕著なのが、通知やハンドブックを活用した手続です。2025年度実績で、マイナンバーカード受け取りの事前予約率は83%、お悔やみ手続は47%に達しました。
最も重要な成果は、待ち時間の劇的な短縮です。Web予約を利用した市民の待ち時間は0秒。村上氏によれば、「市民の方が予約時間よりも前にチェックインをされて、職員の方も予約時間よりも早く呼び出す運用になっておりますので、実質としてはマイナスの待ち時間が実現しております」といいます。従来の「待てば呼ばれる」方式から、来庁時間を指定する予約方式へと転換しました。
一方、予約なしの来庁者の待ち時間は窓口発券で2分30秒、整理券では9分32秒となっており、予約の有無による差は明確です。

職員の変化:「呼ぶ前に把握できる」安心感
職員側のメリットも大きい変化でした。村上氏は主な変化として3点を挙げます。
第一に、手続内容の事前把握による精神的負担の軽減です。呼び出す前に手続内容を把握できるため、特に経験の浅い職員の不安が大きく減少しました。以前の発券機では「マイナンバー」と表示されても、受け取りなのか暗証番号変更なのかはお呼びするまで把握ができませんでした。
第二に、事前準備による受付時間の短縮と手続漏れの防止です。Web予約の入力項目をカスタマイズし、手続選択肢や自由記入欄で情報を事前取得しています。お悔やみ窓口のように必要な手続が来庁者ごとに異なるケースでも、その方に合わせた案内と書類を事前に準備できるようになりました。
第三に、リソースカレンダーによる待機者数・手続内容の予測です。当日発券も併用しながら、予約枠と非予約枠を合わせてリソース管理することで、支障のない運用を維持しています。
今後の展望:「行かない窓口」へ
三条市が目指すのは、市民の利便性を最大化し、来庁そのものを減らす「行かない窓口」です。オンライン申請の推進と併せ、来庁せざるを得ない場合も予約によるメリットを活かした窓口運営を目指しています。そのため、現在54%のオンライン申請カバー率を2026年度中に70%へ引き上げるとともに、現状7割を占める当日来庁者を予約へシフトさせることが次の課題です。
市民窓口課長の諸橋氏はこう語ります。「予約制のメリットは副次的効果を含め、日に日に増しています。だからこそ、FrontDeskをただの予約システムで終わらせず、他のシステムと連携し、さらに効率的な運用ができるよう努めていきたいと思います。」
