裾野市

窓口改革事例:「頼りになる窓口」を目指して

~デンマーク製予約発券システム「FrontDesk」とデータ分析による運用の見直しが実現した “待たない窓口” への進化~

 

はじめに:市民の声を起点とした「頼りになる窓口」への挑戦

静岡県東部、富士山の南麓に位置する裾野市は、自然と産業が調和した暮らしやすいまちとして発展してきました。近年、裾野市は住民サービスの質向上と業務効率化を目指し、デジタル化を前提とした業務改革を積極的に推進しています。

この業務改革の核となるのが、「頼りになる窓口」の実現を目指した窓口改革です。改革は、令和4年(2022年)ゴールデンウィーク中の市民課窓口での大混雑(手続きが完了するまで4時間以上市役所にいた住民が発生)をきっかけに、その必要性が強く認識されたことから始まりました。

【現状把握:市民・職員双方の負担】

改革の第一歩として、職員が市民と同じ手続きを体験する「窓口体験調査」を実施。その結果、以下の重大な問題点が判明しました。

・ 滞在時間の約35%が「待ち時間」: 改革前は、転入手続きに要する平均2時間半の滞在時間のうち、1時間近くが「お待たせしているだけの時間」。

・ 手書き記入による負担: 多くの手書き作業が、市民・職員双方にストレスを与えている。

・ 先の見通しが立たないストレス:いつ呼び出されるかわからず待ち続けることは過大なストレスとなる。

市民のストレスを軽減し、同時に職員の負担を増やさない「理想の窓口」を目指すため、職員ワークショップを経て、その中から「待たない窓口」の実現を優先課題として設定しました。

 

「待たない窓口」を実現:予約発券システム「FrontDesk」の導入

待ち時間短縮、すなわち「待たない窓口」の実現のため、市は手続き開始までの時間を削減するソリューションを探求しました。そこで出会ったのが、DXが進むデンマークで広く利用されているクラウドソリューション「FrontDesk」です。

FrontDeskは、発券機として予約と発券が単一のデータベースで管理されている点が当時のほかの製品にはない特徴でした。こうした背景から裾野市は、先駆的な取り組みとして2023年1月に北九州市と共同でFrontDeskとのパイロットプロジェクトを開始しました。

【主要な戦略:予約優先制によるピーク平準化】

待ち時間の発生源である来庁者の「人の流れのピークを平準化する」ため、来庁時間を予約優先制とすることにしました。

・ FrontDeskのノーコード機能により、予約サイトを迅速に構築し、職員自身がカスタマイズや調整を担当。

・ オンライン化可能な手続きは、各ページへ誘導し、来庁者数の抑制を目指しています。

【定量的な成果:市民の時間を市民にお返しする】

予約優先制の実施により、来庁者の平準化に成功。2022年と2024年での比較では、劇的な改善を達成しました。

最繁忙日の手続き開始までの平均待ち時間

・2022年: 36分45秒

・2024年: 3分50秒 →89.6%の改善

また、手続き開始時刻の把握が可能になったことで、ただフロアで手続き開始を待つだけだった時間を、買い物に行ったり、一度家に帰ったりというように、市民の時間利用の選択肢を増やすこと=市民の時間を市民にお返しする「時間価値の向上」を実現しました。

 

 

高い住民満足度と職員の負担軽減

窓口業務改革の効果は、高い満足度として現れています。2025年1月から4月半ばに実施した利用者満足度調査の結果は以下の通りです。

・ 利用者満足度: 85.8%の利用者が「満足(10点満点中9または10)」と回答。

・ NPS(推奨度): 77.7という極めて高い数値を記録。

アンケートでは、「待ち時間がなかった」ことなどFrontDesk導入による効果を感じられる回答に加えて、「丁寧で速い対応」といった、体験全体の評価が目立ちます。裾野市では、これは手続きプロセスの改善に向けた職員の努力が最も大きな要因であると捉えています。

また、職員側からも「待っている住民が減ったことでプレッシャーやストレスが軽減した」「時間外での窓口処理が減った」という声が聞かれ、職員の負担軽減にもつながっています。

(注釈:NPSとは…サービスをほかの知り合いに勧めたいかどうかを10段階評価してもらい、その回答の数値から顧客ロイヤルティを図る手法)

 

FrontDeskのデータを活用した継続的な改善

FrontDeskが提供する詳細な処理記録を活用し、導入後も継続的な改善を実行しています。

事例①:ログデータに基づくリソース管理の最適化

FrontDeskの「リソース管理機能」を用いて、職員の対応枠や手続き時間を随時調整しています。

・ マイナンバーカード窓口の見直し: 導入当初は予約時間が細切れで効率が悪かったものの、ログデータをもとに予約枠を「大きく見直す」ことで処理件数が大幅に改善。

・ 職員の休憩確保: 昼休み時間帯の予約数をコントロールすることで、職員が休憩を取りやすくできるようにパラメーターを調整。

事例②:窓口集約化とレイアウトの最適化

以前は課ごとに窓口があり、混雑の度合いに偏りがありました。市は、職員の執務スペース拡大も視野に入れ、窓口の集約化を進めることとしました。

窓口担当職員からは「窓口が足りなくなるのでは」という不安の声も上がったため、FrontDeskのログを集計・分析。結果、窓口の占有時間は平均して26%しか使用されていないことが判明しました。これは窓口数が不足していたのではなく、稼働の偏りに課題があったことを示しています。

このデータに基づき、窓口を共有化し、窓口数を37から26に削減しました。

・ 新しいレイアウト: 1人席・2人席に加え、車いすやベビーカーに対応した優先席を設けたフリー窓口を導入。

・ 効果: 執務スペースを約50平方メートル拡張することに成功。

 

結論:デジタルと人の力による「頼りになる窓口」の実現へ

デジタルツールの導入はあくまで手段であり、すべてを解決するものではありません。FrontDeskを最大限に活用するためには、システムの処理記録と住民アンケート結果を用いた定量的・定性的な判断材料による運用面の見直しが不可欠でした。

以上の取り組みを経て、職員の改革に対する意識も少しずつ変化し、自ら運用面の変更を提案・実装する職員も現れ始めています。

裾野市は、デジタルツールであるFrontDeskが実現した「待たない窓口」を一つの要素とし、そこに職員の意識改革と運用改善という人の力を掛け合わせることで、誰もがストレスなく手続きを完了できる「頼りになる窓口」の実現に挑戦し続けます。