2026.02.25

窓口予約制、もう形骸化していない? 自治体DXで実現する「予約が活きる窓口」の作り方

〜予約制にしたはずなのに、なぜ現場の忙しさは変わらないのでしょうか。〜

窓口予約制、導入したのに予約されない?

「予約枠を用意しているのに、なかなか埋まらない」

「当日になって来ない人が多い」

「結局、予約なしで来庁する人が後を絶たない」

窓口の時間予約制を導入したものの、こうした悩みを感じたことはないでしょうか。

待ち時間対策として期待された予約制ですが、運用してみると「予約されない」「予約しても来ない」という新たな課題に直面するケースも少なくありません。

職員としては、

「ちゃんと広報紙にも載せた」

「SNSでもホームページでも周知している」

それでも予約率が思うように上がらないと、「予約そのものが合っていないのでは」「これ以上、何をすればいいのか」と感じてしまいます。

しかし、この課題は日本の自治体だけのものではありません。海外の自治体や政府機関も、同じ壁にぶつかってきました。そしてその多くは、予約制の「設計」を見直すことで改善してきたのです。

 

予約率が上がらない原因は「周知不足」だけではない

日本の自治体では、予約率向上というと「周知広報」が中心と捉えられがちです。

もちろん、制度を知ってもらわなければ予約はされません。しかし海外の事例を見ると、周知よりも重視されているのは次の点です。

  • 予約した人が実際に来庁するか
  • 来られない場合にキャンセルされるか
  • 空いた枠を別の人が使えるか

つまり、窓口業務の観点で見ると、予約率とは「窓口で用意した時間枠が、計画どおりに活用されている割合」と言い換えることもできます。

 

 現場では、なぜ予約が活かされないのか

実際の現場では、

「急ぎだから予約せずに来た」

「予約の仕方がよく分からなかった」

「予約したが、後で予定が変わった」

といった理由が、単独ではなく複雑に重なっていることも少なくありません。

予約が機能しない原因は、住民の意識や協力不足だけで説明できるものではなく、制度と現実の行動との間にある「ズレ」にあります。

 

「予約前後」を支える仕組みが、予約を活かす

海外で重視されているのは、予約そのものではなく「予約前後の体験設計」です。

予約を「取れる状態」にするだけでなく、「来庁までつなげる設計」が重要となります。

 

 1.予約前のユーザー体験を整える

予約手続きが複雑だったり、必要書類や条件が分かりにくいと、予約率は上がりません。
予約完了時に確認通知を送り、日時・場所・持ち物を明確に伝える仕組みや、前日・当日のリマインド通知を送ることで、「忘れていた」「勘違いしていた」といった理由による欠席を防げます。

さらに、予約可能な時間帯の見せ方も重要です。選択肢が多すぎると「今すぐ予約しなくてもよい」と判断され、予約の先延ばしにつながります。市民にとって重要なのは、「選択肢の多さ」よりも、「今、予約できると分かること」です。時間枠の見せ方を工夫し、必要な選択肢を適切な粒度で提示することで、迷いを減らし、予約につなげやすくなります。

これは「住民の意識」に頼るのではなく、仕組みで来庁を支えるアプローチです。

 

2.来庁までの行動をサポートする

予定が変わることは、誰にでもあります。近年、海外の自治体ではキャンセルを「迷惑行為」と捉えず、早めに知らせてもらうことが全体最適と考えられています。
例えば、メールやリンクからワンタップで予約の取り消し・再予約ができる仕組みがあれば、無断欠席が減り、予約枠の有効活用が進みます。早めにキャンセルが出れば、その枠を他の住民が利用できるため、「予約が取れない」「予約枠が無駄になっている」といった不満の解消にもつながります。

 

3.制度と体験を循環させる仕組みを持つ

「何人に周知したか」ではなく、「来庁率」、「無断キャンセル率」、「事前キャンセル率」、「チェックイン率」「予約方法(Web・キオスク端末・電話など)」を総合的に確認することで、現場感覚を客観的に共有できます。
この情報をもとに応援配置や受付体制を調整すれば、属人的な勘ではなく、計画どおりに手続きを進めるための共通認識として活用できます。
制度と市民行動の間のズレを見える化することで、予約の体験全体を改善する循環が生まれます。

 

予約制は「予約なし来庁」を排除するためのものではない

もちろん、すべての来庁者が予約できるわけではありません。

大切なのは、「予約なしを排除すること」ではなく、市民がスムーズに手続きを受けられる環境を整え、予約という選択肢を最大限活かすこと です。

予約が機能すればするほど、来庁のタイミングや手続き内容が予測できるようになり、余力も生まれ、結果として、すべての来庁者への対応品質が安定します。

 

予約制は「来庁を減らす」ための入口になる

さらに重要なのは、窓口予約制を「来庁を前提とした仕組み」で終わらせないことです。

予約時に手続き内容や目的が可視化されることで、「この手続きは本当に窓口が必要なのか」

「事前にオンラインで完結できないか」といった検討が、現実的にできるようになります。

予約制は、単に来庁を整理するための仕組みではありません。

将来的に「窓口に来なくてもよい手続きを増やすための入口」としても機能します。

予約時点で用件や状況を把握できる仕組みは、窓口業務を効率化するだけでなく、業務そのものを見直すための材料を自治体にもたらします。

「予約され、来庁される窓口」から、その先の窓口のあり方を見据えて。

重要なのは、予約制度を「周知の問題」と捉えるのではなく、「行動を後押しする設計」の問題として捉えることです。

こうした考え方を踏まえ、いま一度、予約制度のあり方そのものを見直してみてはいかがでしょうか。